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【超平均的社会は人を殺せる】何故日本は自殺大国なのか【ブラジルと比較して考える】

超平均的社会は人を殺せる

初めて日本で勤めた会社の先輩(男性)が自殺しました。56歳、会社の人が無断欠勤ということで連絡をとり、自殺2日後にやっと発見されたそうです。

お子さんはなく、10年ほど前に離婚されて独り身。私が会社を辞めた後もちょこちょこ連絡しあったり、日本帰国時は会ったりする様な、とても近い関係ではないし歳も離れているけど、自分としてはいい友人関係だと思っていました。

最後に会ったのは1年半程前の日本帰国時、「俺負け犬だからなぁ」と何回も何回も言ってたのを覚えています。

自殺したと連絡を受けたとき、思ったことがあります。

「先輩は、日本社会に殺されたな」

先輩が自殺した理由は明らかにされていません。だからここから先の私の意見は、先輩の件に当てはまるとは限りません。憶測にしかすぎません。

ただ、日本を外から見たときに、自殺大国である根本的な原因が日本の「超平均的社会」であるように見えてならないのです。仕事のプレッシャーや、金銭問題、いじめ問題等は、あくまで自殺行動のトリガー(引き金)であって、根本的な原因ではないと。

日本で超平均社会の枠から外れたら

日本は超均質的な社会です。単一民族国家ですから、外見は勿論、考え方も(良くも悪くも)画一的です。生活レベルも(勿論金持ち貧乏では違いますが)、少なくとも絶対的貧困(※)である人はほとんどいない、高い水準をたもっています。

※絶対的貧困→生きるために必要最低限の衣食住がまかなえていないレベルの貧困

私はブラジル在住ですが、日本の平均的な生活レベルは、ブラジルの上位層と同じレベルです。生活レベルだけではなく、教育水準等ほぼ全ての面で、日本の方が優れていると断言できます。

↓ブラジルと日本の生活レベルや社会構造の違いについては、こちらの記事をどうぞ 

viagemxvida.hatenablog.com

日本はとてもいい国です。あなたが、その平均の中に含まれているのであれば。

日本は、超格差社会のブラジルと違い「平均」を語ることができます。個人的にはほぼ全ての面で、90%が平均に属している社会だと感じています。生活レベルだけの話ではありません。政治的な意見や、人生の道筋まで本当に似通っていると思います。

あなたが、もし平均から外れたと想像してみてください。9割の人が平均に属するなか、あなたがその分野で平均未満=負け組みになったと想像してみてください。

日本で平均から外れるということは、社会から外れるということ。

その疎外感を想像するのは難しくないと思います。

何が人を自殺に追い込むのか

 先輩は落ち着いた静かな素敵な人でしたが、仕事の要領のいい人ではありませんでしたし、社交的でもありませんでしたから、所謂出世とは無縁でした。離婚されたあとも人付き合いは殆ど無かったと思います。

先輩の生活レベルは、決して悪いものではありませんでした。東京近郊の都市にマンションをもっていましたし、中規模ではありますが比較的安定した会社に勤めていました。ただ、先輩が属する社会の中で、先輩が平均的じゃないものがあったとしたら、「30年以上会社に勤めていて、役職らしい役職についていない」こと、「離婚している」こと、「子供がいない」ことです(私が知る限りですが)。

もちろん、今でこそ結婚しないことや子供をもたないという選択は(少なくとも男性であれば)、認められていますが、先輩の年代ではそうじゃないと思います。実際に、先輩の世代の会社員で、先輩を冗談半分ではありますが、「バツイチで、仕事ができない」ことをからかう人は結構いましたから。

先輩の社会の中で、先輩は平均から外れていました。なおかつ、実生活でも先輩は一人でした。(離婚されてお子さんもいらっしゃらなかったので)

社会からの疎外感は間違いなくあったと思います。でなければ、「俺、負け犬だからな」なんて、謙遜でもなく本気の言葉で言わない筈です。

だから、先輩が自殺したと聞いたとき思ったのです。社会から外れることは、人を自殺に追い込むことがあるのだと。

仕事のプレッシャー、人間関係のもつれ等は、自殺行動のトリガーにすぎない

社会から疎外されたくらいでは、自殺なんてしないという人がいるかもしれません。やっぱり、仕事のプレッシャーや金銭問題が自殺の原因という人もいるかもしれません。

そういう人たちは、ブラジルの自殺率の低さをどう説明するのでしょうか。

ブラジルは、ほとんどの人が、日本レベルでいえば貧しいです。

人間関係の揉め事も、日本以上にあります。※ブラジル人は基本的に「自分中心」で、自分の要求・欲求をしっかり示すので、それ故揉め事になることも多々。

でもブラジル人の自殺率は世界最低レベルです。

ブラジル人が陽気だから自殺率が低い?それもあるかもしれません。

でも私は、ブラジル人の自殺率が低い理由が「超格差社会」にあると見ています。ほんの一部の上位層と、たくさんの下位層、平均なんてないブラジル社会では、平均から外れるという間隔がありません。どんな人にも社会に居場所があります。

結局、平均的な社会では、何か問題があったときに、その問題から逃げていいという考えになりにくいんだろうなと思います。逃げることは、社会の平均から外れなくてはいけないことが多々あるからです。

例えば、仕事のプレッシャー。自殺を考えるくらい仕事がきついなら、やめればいいんです。逃げればいいんです。日本はバイトで週30時間も働けばとりあえず生きていくことができます。社会保障をだってああります。でも、平均的日本人は会社に属し、そうじゃない人たちは日本社会の数少ない「負け犬」になるから、その選択をしません。

学校のいじめ?学校を変えればいいんです。やめればいいんです。逃げればいいんです。でも、日本は入学から卒業まで1つの学校に通うのが「平均」で、学校を変えるといった選択肢すら考えないこともあります。

よく言われる、仕事のプレッシャーやいじめ問題等は、あくまでトリガー(引き金)で、その根本原因は、「逃げること=平均から外れること」で「平均から外れることは負け犬になること」になってしまう日本の「超平均的社会」にあるような気がしてならないのです。逃げるという選択をするハードルが高いのです。

日本は1人でも生きていける

あともうひとつ、ブラジル社会の比較して違うのが、日本は「一人でも十分生きていける」生活環境にあるということです。

生活の厳しいブラジルでは、本人が望む望まないに限らず、「人と一緒にいないと生活できない」です。家族・親族といった大人数で生活をともにし、生活コストをシェアしあい、家族総出で働き生計をたてています。

人と接さないと、生きていけないのです。

家に帰って、一人ぼっち。誰ともしゃべらないなんてことは、ブラジルの大多数の人間にとっては不可能です。日本だったら、アルバイト生活であってもひとりで生きていくことが可能ですよね。

先輩も、離婚したあと実家に帰るという選択をしませんでした。仕事もありましたし、なにより自分ひとりで生計を立てていくことは十分に可能でしたから。

一人でも生きていけることが、逆に「孤独」を生むんだなと、ブラジルで暮らすようになってから、思うようになりました。

 日本社会に思うこと

私は日本人です。人生の半分以上を海外で過ごしていますが、自分は日本人で日本人であることを本当に誇りに思っています。日本は私の母国で、大好きな国です。

でも、少し海の外から日本を見たとき、あまりにも「平均」にしばられすぎてはいないかと思うのです。その均質性が日本のすばらしいところでもあるのは、もちろん理解しています。

ただ、その平均から外れたときに、社会にもっとそれを受け入れる寛容性があったら、日本はもっともっと生きやすい国になるのではと思うのです。