2020年4月17日、世界中がコロナウィルスの感染拡大を防ごうと様々な対策を講じています。ここブラジルも、日本と同じく感染拡大にむけて対策を立てていますが、コロナ問題にブラジルの政局がからみ、とてもややこしい状態になっています。
日本のニュースでも「狂人」ボルソナロ大統領のコロナ軽視発言や、自粛政策反対デモが報道されたと聞いています。
今回は、ブラジルのコロナを巡る政局、なぜこんなに混乱しているのか、ブラジルの現状について記事にしました。
ブラジルの政局
登場人物の紹介
政府(ボルソナロ大統領)⇒経済自粛政策反対・州政府非難
ブラジルのボルソナロ大統領、極右で南米のトランプとも呼ばれる。
今回のコロナ騒動でも「コロナはただの風邪のようなもの」という問題発言を繰り返したりしていて、州政府が行っているクアレンテーナ(外出禁止令)も非難している。
そもそも、ボルソナロ大統領は去年の大統領選で「ブラジル経済再生」を公約に掲げているので、経済活動をとめないという事は断固としてゆずれない。
経済自粛政策は「州」が行っているものだから、経済的損失は「州」が行うべきとの考え。
世界中のメディアで「狂人」扱いされている。
が、一つ彼を擁護しておくと「自粛政策に反対」なのではなく、「自粛政策により経済活動の自由が奪われること」がおかしいというスタンス。
要は、コロナ感染の拡大を防ぎつつ、バランスをとって経済活動すべきという考えだが、日本メディアや西側のリベラルなメディア様からは、そこをかっとばして「人の命より経済活動を優先させる頭のおかしい大統領」としてひっぱりだこ。
日本の安倍首相と同じく、コロナウィルス戦で支持率を急降下させた数少ない人物。むしろ安倍首相より支持率がさがった、ある意味すごい人。
州政府⇒経済自粛政策・政府非難
州政府単位でクアレンテーナ(外出禁止令)を行い、自粛政策を行っている。
州知事で特に重要な人物が、サンパウロ州知事のドリア氏。
サンパウロ州はブラジルのGDPの30%をうみだすブラジル経済の中心地であり、非常に重要度が高い。
ドリア氏はいち早くサンパウロ州にロックダウンをかけ、コロナ軽視の大統領を非難。
ちなみにこのドリア氏、サンパウロ州知事選では、ボルソナロ大統領を支持しそれにあやかり州知事に当選した人物。今回のコロナ騒動で大統領に反旗をひるがえし、大統領と喧嘩中。
※本当に喧嘩したらしく、会議中にののしりあいをしていたというメディアもあり
このドリア氏のコロナ対策は、人命優先とみせかけ、次期大統領戦をみすえてのボルソナロを引きずりおろす目論見とも。※ドリア氏は次期ブラジル大統領戦のボルソナロの対抗馬とされている
州単位で自粛政策をしているものの、経済的補償は国にださせようとしている。
世界中のメディアで、頭のおかしい大統領に抵抗する常識人とされているが、実は自分のこと最優先、、、な腹黒い人という気がしなくもない。
マンデッタ保健相⇒経済自粛政策支持
政府側ではあるものの、保健相という立場から経済自粛政策は支持(あたりまえ)
そのせいで一度は大統領に解任されそうになるも、とりあえずまだ保健相でいる。
このご時勢に解任したら、相当な混乱が予想されるので、ボルソナロ大統領もすぐに解任というわけにはいかないはず。
個人的には、保健相という立場を考えると、最もまともに自分の仕事をしている人物だと思う。(経済的なことはおいておいて、国民の健康をまもる立場なので、自粛政策支持はあたりまえ。)
右と左で真っ二つなブラジル国民だが、このマンデッタ首相の支持は80%近くに上る調査もあり、国民から信頼されていることが伺える。
⇒これを書いている間に(4月16日)解任されてしまった!
解任の理由はマンデッタ保健相の「強固な」自粛政策支持から。
後任はマンデッタ保健相と同じく、医師のネウソン(ネルソン)氏。基本的にはマンデッタ保健相と同じく「自粛政策支持」派。
が、おそらくボルソナロ大統領の意図をくみ、自粛政策=コロナ感染拡大防止と経済活動のバランスを考えるはず。
最高裁判所⇒経済自粛政策支持
大統領には、州単位で行っているクアレンテーナ(外出禁止令)を解除させる強い権限がある。しかし、アレッサンドレ最高裁判事は「大統領が社会的隔離作(クアレンテーナ・ロックダウン)を阻止するような言動を禁止する」という司法判断を出し、大統領に強制的にクアレンテーナを解除する権限はなくなった。
判断は妥当ともいえるが、これにより、国VS州の身動きがとれなくなったともいえる。
経済活動再開さえたい国、自粛政策を行う州、「金(補償)はお互いにださせようとしている」わけで、国民にはほぼ経済的補償が(いまのところ)まわってきてはいない。
マスメディア⇒反大統領
ブラジルの主要メディアは反ボルソナロ一色。ボルソナロ大統領の発言は、南米一の大国の元首としてふさわしくないものが多いけれど、それにしても印象操作が激しいな、、、という(個人的な)感想
マスメディアの煽りをうけて、コロナへの対策が云々ではなく、右(大統領支持)と左での国民の対立が鮮明になっている模様。
ブラジル・コロナ戦が混乱している、最大の戦犯はこの人たちだと思う件。
ブラジルの政局
現在のブラジルの政局
上に書いたとおり、
まず国・ボルソナロ大統領(=経済活動優先)と州(自粛政策優先)の対立がある。
この対立をマスメディアが煽り(※)、ボルソナロ大統領・極右(=国)を支持する右派と反ボルソナロの左派の対立(※※)とつながり、国民がますます2分されているような状況。本来であれば、右や左ということではなく「コロナへの対策」で評価されるべきなのに、メディアの煽りをうけ「右と左」の戦いになっている。
※ボルソナロ大統領の失言や行動をとにかく大きく報道する。一方、ボルソナロ大統領がきめた経済的補助や政策はあまり報道されない。どこぞやの日出ずる国と似ている。
※※去年の大統領戦、ボルソナロ大統領(=右)と前政権PT(=左)と大接戦となり、国民も右と左で2分される状況となった。
州は自粛政策優先なものの、おそらくそれは長くは続けられない。下の記事でも書いたように、ブラジルのいたるところで自粛解除を求めるデモがおこっており、なにより、自粛政策を続ける経済的体力が無いからだ。
コロナ騒動が始まる前から、「絶対的貧困(=人としての必要不可欠な欲求がみたされない状況)」に位置する人が大勢いる国。すでに餓えは始まっているし、勝手に店を再開している人も増えている状況。
ブラジルのボルソナロ大統領には、州が行っている自粛政策を解除させる権限があったが、最高裁がそれを否定したことにより事実上解除を強行させることはできなくなっている。まさに自粛解除も出来ず、経済的補償は州と国で押し付け合い、身動きがとれなくなっている状態。
今後のコロナを巡る政局
4/16にマンデッタ保健相が解任されたことにより、ボルソナロ大統領はさらに自粛解除にむけての圧力を強めるはず。
すでに自粛政策がはじまり1ヶ月近くになる州も多く、このままま自粛を緩める(緩めざるを得ない)州が多くなると思われる。
ただし、感染が爆発しているサンパウロ州はそのかぎりではなく、自粛を続ける州、経済をまわしたい国、それを非難するマスコミ、自粛したくても先立つもの(金)がなく商業活動をはじめる人々、でますます混乱するかもしれない。
マンデッタ保健相解任は吉か凶か
マンデッタ保健相の発言や行動は「保健相」としてまっとう。だが、まっとうすぎる発言のせいで、ブラジルの身動きがとれなくなってしまったことも事実
マンデッタ保健相が解任され、(おそらくボルソナロ大統領の意図をくみつつ自粛政策支持を行うであろう)ネウソン保健相が就任したことにより、コロナ感染拡大を抑制しつつ、経済活動をまわす政策に政府全体がまとまると思う。
州政府も心の底では経済活動再開を望んでおり、政府が自粛政策と経済活動のバランスをとるようにシフトするのであれば、それに従うはず。
自粛政策と経済活動のバランスを考え、クアレンテーナ(外出禁止)→解除→クアレンテーナ(外出禁止)→解除で、感染ピークを低く長くすることに成功すれば、吉とでると、、、信じたい。
ブラジルコロナ感染状況
サンパウロ州、リオデジャネイロ州、セアラ州で感染の拡大があり、すでにサンパウロの集中治療室の7割はうまっているという報道も。
まとめ
以上、ブラジルコロナ戦の状況でした。
日本では、ブラジルが「ノーガード戦法」でいる(=何も対策していない)と思っている人もいるようですが、州単位でクアレンテーナ(外出禁止令)をしていますし、ノーガードではありません。
ブラジルは国土が日本の約23倍、人口も2倍近いです。さらに、その中に貧富の差があり、その貧富の差は教育レベルの差にもつながり、コロナに対する意識にも相当の差があります。コロナ戦においては、社会的距離をとるのは重要ですが、ファベラ(スラム街)という、そもそも社会的距離をとることが無理な場所もたくさんあります。
個人的に、ブラジルのコロナ戦は日本の何十倍も複雑だと思っています。
早くコロナウィルス騒動がおさまるのを祈るばかりです。
日本ブログ村に参加をはじめました。ポチっとしていただけると、うれしいです!