「サンパウロの最も危ない地域・クラコランディアで銃撃戦」とは
2019年11月8日、サンパウロ中心部・クロコランディアで、地元住民と市警察の間で争いがあり銃撃戦に発展した事件。
この争いで、市警察の一人が腰に発砲をうけ怪我をしたとのこと
記事・写真引用元はこちら↓ 市警察と地元住民の争いの映像を見ることができます。
※ちなみに↓リンク記事にある映像の中で、バイクを倒された市警察が拳銃をうばわれ腰に発砲を受けていますが、病院につくまで撃たれていたことに気付かなかったとのことです
今回、この事件をご紹介したのは、銃撃戦があったからではありません。銃撃戦自体は、毎日ブラジルのどこかで発生しているので珍しいものでもありません。
事件の起った「クラコランディア」という地域を紹介したかったからです。
ブラジルに住みはじめの頃、この場所の存在を知り「ブラジルって(いろんな意味で)凄いな」と思ったのを今でも覚えています。多分、普通に日本で暮らしている人にも、結構ショックを受ける場所だと思います。
今回は、日本では絶対にありえないであろう場所「クラコランディア」とそれが生まれた背景を紹介します。
↓クラコランディアの様子。とてもサンパウロとは思えないです。どこかの戦争地域の難民キャンプといった感じに見えます。様子を理解するためにも是非みてください。
クラコランディアとは
クラコランディアの場所
サンパウロ地下鉄Luz駅のそばにあります。クラコランディアの場所は、まさにサンパウロの都会のど真ん中です。
クラコランディアの名前の由来
クラコランディアとは、公的な名称ではなく、その区画の特性からこう呼ばれています。
この言葉は造語で、クラック+ランディア(crack+lândia)からきています。
ランディアとはいわば土地のことです。英語のlandとも近いので、これは想像できる人も多いのではないかと思います。
要はクラックの土地ということですね。※クラックと聞いてピンとこない方もいると思いますので、次で説明します
なぜクラックの土地と呼ばれるかというと、クラックを中心としたドラッグの売買および使用が行われる場所だからです。クラックユーザーやドラッグを生業にする人間には便利な場所で、そこを動かず定住(?)しているホームレス等もたくさんいます。上記記事で「地元住民」と表現されているのは、主にドラッグディーラーやドラッグユーザーでそこに住み着いている、もしくはそこを仕事場とする人たちのことを指します。
そういった背景により、クラコランディアと呼ばれるようになりました。
クラックとは
クラックとは超簡単に言うと「廉価版コカイン」です。(コカインの残りかす・ゴミと呼ぶ人もいます。)
ただし、その効果と依存性は通常のコカインよりも遥かに強力です。
そもそも、コカインは金持ちのドラッグです。依存性はもちろんありますが、タバコよりも遥かに低いとする科学者もいるくらい、依存性にくらべて効果の高いドラッグで、ある程度お金がある人たちを中心に出回っています。
クラックはそんなコカインの効能を安く手に入れることができ、ブラジルでも1990年ごろから爆発的に広がったといわれています。
クラコランディアとサンパウロ市の関係
クラコランディアは、サンパウロのど真ん中に位置し、非常に商業的価値の高い場所です。今までに何度も市警察と地元住民との衝突が起ってきました。
しかし解体しても、結局少し場所を変えて、新たなクラコランディアが生まれています。
それだけ、一部の人間にとってはクラコランディアが重要な場所ということですね。
クラコランディアの生まれた背景
1950年ごろ、当時のサンパウロ市長が、サンパウロ市内に散らばっていた売春婦たちを、現在の地下鉄Luz駅周辺に押し込めたことが始まりのようです。
安く売春できる場所として、その周辺にたくさんの人が集まるようになります。売春がある場所には、それを元にした商売が生まれますし、売春とドラッグはきってもきれない関係です。そこに売春だけではなく、ドラッグを生業とする人が生まれ(あるいは移ってきて)、現在のクラコランディアになりました。
ブラジル人の反応(コメント翻訳)
・市警察は、なんの役にもたたないのは今までのことから明らかです。
→サンパウロ市の警察は、賄賂の受け取り等で悪名高いことでも有名です。市民の税金で給料をもらっておきながら、スラム街に武器をながし金銭を受け取っている警察もいたりします。それも含めて皮肉っているコメントはいくつかありました。
※もちろん真面目に働いている市警察もいます
・市は、全然状況がコントロールできてないよね。
→クラコランディア解体を試みているものの、まったく状況が改善しないことを嘆いている人も多いです。
・そこにいる人間をどけたってしょうがないよね。だってそれを仕事にしているんだから、またどっかで同じ商売をはじめるだけでしょ。
→ごもっとも。ドラッグ中毒者を助ける民間のサポート団体はいくつもありますが、現状に追いついていない状態です。
まとめ
いかがでしたか?
日本では絶対に見ることのない光景ですし、旅行でも直接見る機会はないと思います。
※私も、ニュース映像やユーチューブでしか見たことはありません。主人に絶対に1人で近づかないように言われています。
初めてクラコランディアの映像を見たとき、正直そこがサンパウロとは信じられませんでした。ファベラ(スラム街)はもちろん存在しますし、通りが汚れているところもあります。でも、こんなに薄暗く、汚く、異常に人が密集し、その殆どがドラッグの売買に関連しているということに衝撃をうけたのです。
クラコランディアの様々な映像を見ると、ゾンビ映画を思い出します。
興味のある方は、cracolandiaもしくはcrack landで検索すると、この地域に関するたくさんの映像を見ることができます。
人間ってクラックにはまると、こんなに人間らしさを失うのかとびっくりすると思います。
クラック中毒者は、幻覚や幻聴に悩まされ精神が崩壊していきますが、その過程で最初に忘れるのが「衛生観念」と言う人もいます。尿や便をしたいときに、トイレへ行くといった基本的な概念です。それを失えば、当然尿や便は垂れ流しということになります。
また、たった1回分のクラックほしさに、金のかわりに売春を行うということもおこります。
悲しいかな、ブラジルにはドラッグの問題を抱えた人がかなりいます。
願わくば、こういう映像を反面教師に、日本がいつまでもドラッグから距離をおいて、平和でいてくれたらなと思います。